第5話 補遺
① ヒルベルトのホテル
ダフィート・ヒルベルトは、1924年から25年にかけて、ゲッチンゲン大学で数学、物理学、天文学における無限大の問題についての講義を行った。最近出版された講義録によると、ヒルベルトは、有限集合と無限集合の区別を説明するために、次のような例を使っている。
「ホテルに、1、2、3、4、5、… と番号付けされた無限個の部屋があり、各々部屋には1人の客が滞在しているとする。もう1人新しいお客を泊めるためには、支配人は以前からいる客の各々に、ひとつ番号の大きい部屋に移ってもうだけでいい。そうすれば、新しい客を1号室に入れることができる。もちろん、有限な数であれば何名の新しい客のためにも、同じようにして部屋を空けることができる。だから、無限個の家と世帯のある世界には、ホームレスはありえない。」
(David Hilbert's Lectures on the Foundations of Arithmetics and Logic 1917 -- 1933, eds. William Wwald and Wilfried Sieg,. Heidelberg: Springer-Verlag 2013.)